Sunday, July 19, 2009

リフレ派の主張ってそんなに珍しいですか?

図は省略です。
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マクロ経済学
パーフェクトマスター
伊藤元重・下井直毅

デフレーション

 物価が持続的に下がっていく現象をデフレーションといいます。戦後、ほとんどの国でデフレーションの経験はなかったのですが、1990年代の後半から、日本は厳しいデフレーションに陥っています。物価が下がっていくのは、図10-1に示されているように、総需要曲線の左方向へのシフトと、総供給曲線の右方向へのシフトによって起こりえます。前者は消費や投資の低迷などで需要が不足することで物価が下がるケースで、後者は技術革新や低価格品の輸入の増加などで供給が拡大することで物価が下がるケースです。現在の日本では両方の現象が起きていますが、とくに前者の影響が大きいものと考えられます。なぜなら、物価の下落と同時に失業の増大や生産の低迷が起きているからです。
 インフレとは逆に、デフレの場合は、債務者が大きな実質負担を被ることになります。1%の物価の下落は、実質債務の1%増を意味するからです。とくに、物価の下落が売上げや所得の減少をもたらし、需要が縮小し、さらにいっそうの物価下落を招くというデフレ・スパイラルがもたらす経済へのマイナスの影響ははかりしれません。そうした状況を打開するために調整インフレという政策が打ち出されることがあります。

《チェックポイント》
調整インフレ(adjustment inflation):金融緩和政策によって貨幣量を増大させ、人々の期待インフレ率を高めて、物価を上昇させていく政策をいう。その手段としては貨幣供給量の増加率やインフレ率の目標を発表し、実現することなどがある。
 この政策のメリットとしては、インフレ率の上昇によって実質利子率を低下させ、設備投資や住宅投資を刺激することや期待インフレ率を高めることで株価や地価を上昇させて景気を浮揚させること、また長期的にはインフレによって政府の債務が目減りして財政赤字の問題を解決できるなどがあげられる。しかし、調整インフレについては、そもそも期待インフレ率を高めることができるのかということや、インフレが生じてもそれをコントロールできるのかということなど、その影響や効果など多様な問題を含んでおり、さまざまな議論がある。

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