Saturday, July 18, 2009

停滞の理由

利子率=金利。

cover
経済政策を
歴史に学ぶ
田中秀臣
 長期不況を解くキーはデフレが将来も続くと考える人々の期待にある。たとえば投資や消費は現在と将来の取引ともいえる。なぜなら新規プロジェクトを立ち上げる際に銀行から資金をファイナンスする際に重要なのは現在の利子率である名目利子率ではなく、その借り入れた利子率が返済までの将来時点でどう変化するかを表した実質利子率である。実質利子率は名目利子率から予想されるインフレ率を退いたものに等しくなる。
 これは消費のケースでも自動車や住宅を購入するときのローンの返済を念頭に置けばいいだろう。投資でも消費の場合でも、実質利子率が高ければそれだけ返済コストが増えるので投資や消費は低下する。その反対に実質利子率が低ければ返済コストが抑えられ、より多くの消費と投資が可能になる。
 日本の長期停滞の特徴であるデフレとゼロ金利の状況を考えてみよう。たとえば目にする名目利子率はゼロであっても、デフレが数%続くと予想すればそれだけ実質利子率は高くなり景気を悪くする。日本の不況がこれほど長く続いたのは人々のデフレ期待が頑固に定着したからである。そしてこの金融市場の不調整が、労働市場の賃金の下方硬直性と衝突すること(既存正社員の交渉力を高めて新卒採用を制限すること)で失業を高めてしまう、というのが大まかな長期不況のシナリオである。

0 comments:

Post a Comment