Sunday, July 19, 2009

ビジネスの要諦

著者である小倉昌男氏はヤマト運輸の二代目社長です。

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「なんでだろう」から
仕事は始まる!
小倉昌男
 ところで、私が前に、人事考課における社員の評価基準は、つまるところ「人柄」に行き着くのではないかという話をしたことを覚えておいでだろうか。社員の業績をいかに評価するかということについてさんざん悩み、結局は社長を辞めるまでその問題に答えを出せなかった私の、それが当面の結論である。
 もちろん、この考え方には異論もあるだろうし、私もそれが「正解」だと思っているわけではない。実際、「人柄」などという目に見えないものを評価しろと言っても、公正な人事考課システムを作ることなどできないだろう。
 しかし少なくとも、それを人事考課の対象とするかどうかは別にして、ビジネスをする人間に「人柄」が求められることは間違いない。たしかに職務上のスキルや実行力も大切だし、数字のような目に見える結果を出すことも大事だ。でも、それだけでは本当に人の役に立つビジネスマンとはいえない。
 もちろん、業績を伸ばせば「会社」の役には立ったことにはなるだろう。だが、それが必ずしも「社会」の役に立っているとはかぎらないのだ。事実、談合によって仕事を取ってきた人間は、会社の売上げアップには貢献しただろうが、社会の役には立っていない。むしろ迷惑をかけている。
 ビジネスマンに「人柄」が求められるのは、とりもなおさず、仕事の根幹が人間関係にあるからだ。社内か社外かを問わず、仕事にはさまざまな人間関係が発生する。
 その人間関係を円滑に、つまりお互いが納得できるような形で作れるかどうか。それができることが、「人柄がいい」と言われるための大前提であり、最低条件だと言えるのではないだろうか。そしてある意味で、ビジネスの要諦はそこにあるとさえ言えるだろう。どんなに特別なスキルよりも、その人間関係を作る能力、つまり「人柄」のよさが、ビジネスでは大きな力を発揮するのである。

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