Sunday, August 2, 2009

自信たっぷりに振る舞えば、あなたが何を言っても信じてもらえる(かもしれない)

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1997年—
世界を変えた
金融危機
竹森俊平
財政赤字が累積した結果、日本の国・地方を合わせた債務残高は、GDPの170%に及ぶ。このままでは、やがて日本の財政は破綻するという意見がある。日本は国債のディフォルト(債務不履行)を迫られるというのだ。本当にそうなのか? なぜ、そう言えるのだろう?
 あるいはこうも言う。いまやアメリカの経常収支の赤字はGDPの7%に及ぼうとしている。これ以上、経常収支の赤字が膨らむと、国際通貨としてのドルの信用は失墜しドル価値は暴落するというのである。本当にそうなのか? なぜ、そう言えるのだろうか?
 客観的な事実を述べるならば、戦後において先進国が自国通貨建てで発行した国債のディフォルトをした事例もなければ、ある国の通貨が国際通貨という地位を過剰な経常収支赤字によって喪失したという事例もない。だから、どちらも「不確実性」である。それゆえ、これ以上財政赤字が増えるとディフォルトを余儀なくされるとか、経常収支の赤字が増えるとドル価値が暴落するとか、客観的な確率を提示して経済学的に論証することは不可能である。それにもかかわらず、上のような主張は著名な経済学者によってなされている。「不確実性」についての合理的判断は不可能というナイトの立場からすれば、「ディフォルト」や「通貨信用」についてこれだけ堂々と議論できるというのは眉唾だ。経済学はそこまで強力ではない。

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