私は昭和二十五年の四月、渡米するに先立ってマッカーサーと会った。有名な何とかいう百姓のようなパイプを右手にしてマッカーサーが開口一番「金(きん:引用者)は、」といった時、サスペンスもあり十分な役者であったが、その説くところの深いのには感心させられた。彼は要するに「金」は何世紀の間人類の交易の手段であり、したがって和解の手段であった。ところが、今やその大部分が米国に集まってしまった結果、各国の間の交易の手段は失われんとし、それにしたがって和解の道も閉ざされようとしている。しかも、金に代わるものはまだ生まれていない。その結果としてアメリカには「過剰のための貧困」があり、丁度日本の「貧困のための貧困」と対照をなしている。いずれも困難な問題である。というのである。「金」に代わるものは「信用」なのだ、と私はいおうと思ったが、マッカーサーは一度話し出すとなかなか雄弁で止まらない。「そもそも大蔵大臣というものは」というのが次のセンテンスの始まりで、大蔵大臣は国民から憎まれることをもって職とせねばならぬ(彼がこの時腹の中で、私がその一月ほど前にいった中小企業の五人や十人つぶれても云々ということばを想い浮かべていたことは明らかである)、何となれば、大蔵大臣の職務はできるだけ国の費用を切り詰め、国民の租税負担を軽くすることでなければならぬ。支那の王道は、国民の税金を減らすことを最高の目的とした。古今東西政権の交代をみるに、政道にある者が奢侈にわたれば必ず百姓は一揆し、逆に質素を旨とする王者は長く民生の安定をえている。そこで、貴下の当面の問題は、まず日本国民の税金を減らすこと、それから官吏の給料がいかにも低いから、これを適当に引き上げて、徐々に国民生活の向上をはかることであろうと思う、というのがマッカーサーの考え方の趣旨であった。
均衡財政
附・占領下三年の
おもいで
池田勇人池田勇人『均衡財政 附・占領下三年の
おもいで』 p.226
Thursday, July 16, 2009
マ元帥のパーフェクト世界恐慌教室
Wednesday, July 15, 2009
英雄 范蠡(はんれい)
英雄、頭をめぐらせば神仙、ということばがあるが、范蠡がその人である。范蠡こそは、ずっと後世まで、中国人が理想的人間像として仰望している人物であるが、その処世術の根本は、すでに前に言った。
中国英傑伝
海音寺潮五郎
「満は損を招き、亢竜悔あり」
という易の原理である。満つる前に身退くというに尽きる。いわゆる明哲保身である。海音寺潮五郎『中国英傑伝(下)』p.316
努力なく生きる
私たちを滅ぼすのは努力であり、生のほとんどすべての瞬間を費やすこの闘いなのだと思います。まわりの大人たちを眺めると、彼らのほとんどにとって、生とは自分や妻、夫、隣の人、社会との闘いの連続だとわかるでしょう。そして、この絶えまない苦労が精神を消耗させるのです。喜ばしく本当に幸せな人は努力に囚われません。努力なしであるとは、停滞していたり、鈍く愚かだということではありません。反対に、努力や闘いから本当に自由であるのは、賢い人、とてつもない智慧のある人だけなのです。
子供たちとの対話
J・クリシュナムルティ
しかし、私たちは努力がいらないということを聞くとき、そうなりたいし、苦労や葛藤のない状態に到達したくなります。それで、そのことを自分の目標や理想にしてそれを求めて奮闘します。そして、そうしたとたんに、生きる喜びを失っています。またしても、努力や闘いに囚われているのです。J・クリシュナムルティ『子供たちとの対話』 p.292
おもいやりについて
ビジネスで失敗する人の
10の法則
ドナルド・R・キーオ
イエズス会の聖職者で、優れた古生物学者のテイヤール・ド・シャルダンは、「人が進化して未来を切り開いていくのは、すべての人たちとのつながりのなかでしかありえない」と述べている。ほんとうにそうだと思う。したがって、思いやりと敬意をもって他の人たちに接するのは、人として義務だというに止まらない。われわれ人類が生き残っていくために不可欠なのである。倫理を無視する人はしばらくの間、うまくいくことがありうるし、かなりの期間にわたってうまくいくこともある。しかし倫理感覚に欠け、謙虚さに欠けることから、いずれ失敗する。土台が腐っていれば、永続する強固な事業を築くことはできない。
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