Saturday, May 1, 2010

有為転変

50代前半の白楽天の詩について。

cover
白楽天
官と隠のはざまで
川合康三
 境遇は己と関わらぬところで決められるものであり、いかなる場に置かれても内面の静謐を保つ、という態度は中国士大夫の求めたところであり、白楽天もそんな思いをたびたびうたってはきた。しかしそれらの詩篇とこの詩は感触が異なる。自分の心を平静に保とうと努める様子はなく、諦観にも似た感慨を漏らしている。いや、ここにあるのは諦観とか達観とかいうより、自分の置かれた状況にしらけてしまった無気力といった方がいい。中書舎人という職、このまま官界を歩んでいけば宰相にも手が届く地位。が、そんな野心はまるでないかのようだ。どうなろうとなりゆきまかせ、自分は自分の人生を操ることから手を引いてしまおう、と言っているかに見える。

[pp.173]

0 comments:

Post a Comment