コンサルタントの秘密
G・M・ワインバーグ
利口でありたい、成功したいと望み、そのために賭けに負けてばか面を晒す人間は、私一人ではないだろう。いつも正当でありたいと望んでいると、自分の思考過程に何が欠けているか気づくことが格別困難になる。だがジュディーとの不面目な賭けに負けて私は、自分の「何が欠けているか」を見つける技法の持ち合わせをふやさなければ、そして中でも自分自身の思考に関するものをたくさん見つけなければ、と思うようになった。
ソフトウェア設計家との仕事を通じて私は、欠けているものを見つけ出すためのそういった道具をすでに発見していた。ソフトウェア設計過程をチェックするためのやりかたとして、著者たちは次の「三の法則」を教えている。
自分の計画を駄目にする原因が三つ考えられないようなら、思考過程の方に何か問題がある。
Monday, July 5, 2010
秘密の道具
Saturday, May 1, 2010
有為転変
50代前半の白楽天の詩について。
境遇は己と関わらぬところで決められるものであり、いかなる場に置かれても内面の静謐を保つ、という態度は中国士大夫の求めたところであり、白楽天もそんな思いをたびたびうたってはきた。しかしそれらの詩篇とこの詩は感触が異なる。自分の心を平静に保とうと努める様子はなく、諦観にも似た感慨を漏らしている。いや、ここにあるのは諦観とか達観とかいうより、自分の置かれた状況にしらけてしまった無気力といった方がいい。中書舎人という職、このまま官界を歩んでいけば宰相にも手が届く地位。が、そんな野心はまるでないかのようだ。どうなろうとなりゆきまかせ、自分は自分の人生を操ることから手を引いてしまおう、と言っているかに見える。
白楽天
官と隠のはざまで
川合康三
[pp.173]
Friday, April 2, 2010
法学部出身者が一番エライ国の経済政策
宮崎 あのですね、経済政策に直接的、間接的に影響を与えうるのは経済の専門家ばかりじゃないのです。例えば経済学の近接領域である政治学者の影響力もバカにならない。
日本経済復活
一番かんたんな方法
勝間和代
宮崎哲弥
飯田泰之
しかし、ここが一番ひどい状態なんです。例えば有斐閣のアルマというテキストシリーズの一冊に『比較政治制度論』があります。2008年の秋に上梓された本ですが、この9章で「中央銀行制度」が取り上げられているのですが、これがひどい!
「長期的な経済成長のためにはインフレ抑制が重要」とか、「中央銀行の独立性が弱いとインフレ率が上昇しがち」とか、「左派政権は労働者の雇用を守るためにインフレを甘受する傾向がある」などと堂々と記述されているうえに、徹頭徹尾、中央銀行の独立性=善、政治家の金融政策への介入=悪、インフレ抑制=善、金融緩和=悪というバイアスによって貫かれている。すごいのは、この章、インフレという語が頻出しているのに、デフレという言葉は一度も出てこないのです!
著者は建林正彦、曽我謙悟、待島聡史という勝間さんとほぼ同世代の、東大、京大の法学部出身の政治学者で、それぞれ一流大学の教授、准教授です。エリート研究者のレヴェルがこれですもん。あとは推して知るべし。[pp.173]
Thursday, January 14, 2010
偉い人の反対は偉そうな人
これは人間の心情としては当然だろう。天動説の専門家であればあるほど、天動説から地動説に切り替えるタイミングがないのだ。考えてもみて欲しい。昨日まで「地球が中心にあってその周りを太陽が回っているのだ。地球が動くと考えるのは神の御心にそむくものだ」と教えていたわけである。それがいきなり手のひらを返したように「太陽が中心にあって地球はその周りを回っている」と言えるだろうか。
傷はぜったい
消毒するな
夏井睦
弟子たちは「あなたが昨日まで私たちに教えてくれたことと正反対ではないか。あなたは私たちに嘘を教えてきたというのか。嘘を教えてきたあなたは責任を取るべきだ」と詰め寄ってくるはずだ。仮にも人から先生、専門家と敬われてきたのであれば、自説の撤回はなおさら難しいだろう。天動説こそが彼の拠って立つ基盤であり、それを自ら否定するのは自殺行為に等しい。だから天動説の信奉者が地動説に鞍替することはほぼ絶対にない。
夏井睦『傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学』[p.p 161]
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